喝采
「平成生まれ解禁」とかいう言葉を聞いて、平成がはじまって(=昭和が終わって)から、もうそんなに経つんだなと思ってから、早ン年前。
若さの象徴であった平成元年生まれがアラサーに近づき、そして第二次ベビーブーマーの自分は中年を過ぎ、初老に足を踏み入れ始めている事実を悲しくも実感せざるを得ない。
それと共に、若かった平成初期の情景も、やたらと色あせて感じられるようになった。

今回紹介するのは1989年(平成元年)登場のダイハツアプローズ。
冒頭に書いたとおりで、登場から30年近く経っているのだが、そんなに経っているんだと思うくらいで、私の意識が中々付いてきていない。
「今見ても古臭くない」などと書くと、いかにもな感じで、中年男のタワゴトにしかならないので書かないが、個人的にはクリーンな良いデザインだなと思う。
この評価には、中年男の郷愁がかなり加点されているから、若い人がなんと言うかは知らないし、知りたくも無い。
辛い現実は実社会だけで沢山だ。

写真のクルマは2005年、つまり11年前に撮影した前期型の個体。
窓ガラスのセンターに「トヨタマーク」が亡霊のように写りこんでいるが、わざとではない。

顔が変わった1992年(平成4年)以降の中期モデル。
グリルマークはAをデザイン化したものなんだろうな、多分。
何だか安っぽくなってしまったような感じがあって、私はあまり好きじゃなかった。

1997年(平成9年)登場の後期型(最終型)。
当時の初印象は、「やっちまったな」という感じで、いささか幻滅したことを覚えている。
突飛なデザインがあふれかえっている現在の意識で見れば、さほどおかしいとも思わないが、当時はゴテゴテしたところが鼻に付いたし、初期のシンプルな姿が意識のベースとしてあっただけに、特別そう思ってしまったのだと思う。

上にも掲載した白色中期モデルのリアスタイル。
フロントマスク以外は、前期・中期ともにほとんど変化が見られない。

`90年代のデザイントレンドとして、左右テールランプの間にガーニッシュ(装飾の飾り板)を入れるケースが多かったが、アプローズは極シンプルにまとめていて、あっさりとした印象になっている。

アプローズといえば、トランク部分がリアガラスも含めて大きく開く「スーパーリッド」が目玉であったが、トランクフードを閉めた状態では完全な3boxセダンのフォルムとなっている。

後期型のリアビュー。
フロントマスクと同様、光物が加味されているが、突出したインパクトが少ないためか、前期型イメージも色濃くのこる。
基本的なフォルムはほぼそのまんまなので、当然ではあるのだが。

目立つのは、ちょっと変わった割付のテールランプレンズだろうか。
極々一般的な配置の前期・中期タイプと比べると、なかなか個性的なデザイン。
テールランプの大きさ、形状は前期時代から変わっていないように見えるので、せめてレンズの配置だけでも目新しさを出そうと苦心したのだろうと思う。

前期型のテール部分。
右側に表示されているダイハツロゴは90年代まで使われていた旧書式のもの、ヒョロヒョロとした現行書式のロゴよりも、太目のフォントで懐かしい。
トランクのセンターはぶつけたらしくすこしへこんでいる。

後期型テール部分のアップ。
型物の立派な車名エンブレムが付く。
テールランプレンズの、テール・ブレーキはどんな光り方をしたのかな?

せっかくだから、今回は抜粋せずに、なるべく別アングルの写真も載せていこうと思う。
写真のクルマはフロントグリルにメッキの縁取り(塗装かも)がしてあるが、これはアプローズθ(シータ)になってから以降の特徴。
初期のモデルには縁取りがなく、グリル部分は真っ黒け。
個人的にはアクセントがついたこのモデルの方が好き。

同じく再掲の白の中期型。
上ではあまり好きではないなどと書いたが、今見るとこれも悪くない良いデザインだと思う。

どうも私は初期型の印象が強すぎたようで、後期型を見て「ウゲー」と思ったのも、その影響が強いのだと思う。

シャンパンメタリックの後期型。
'80年代から'90年代にかけて、ダイハツは「D」をデザイン化した社票マークを、クルマに付けることを避けていたようで、アプローズも前期・中期の外装には使われていない。
グリルに「D」マークが復活したのはアプローズ後期型が登場した頃からだろうか。

前期・中期ではシックな紺・銀のほか、赤、ミドリなどパーソナルユーザー向けのボディカラーが多かったが、明確にコンセプトを変えた後期型は、高級感を演出するパール系統、重厚なグリーンなどが採用された。
グリーンはこの当時プチ流行していたカラーでもある。

ダイハツディーラーのカープールで見かけた後期型。
2012年撮影、これ以降アプローズを見かけることはなく、最後の機会となった。

販売の取次ぎなどを行う、自動車整備工場などに設置される、車名を記載した立看板。
10年くらい前までは盛んに更新されていたように思うのだが、最近は数自体が減ったような印象が有り、廃止の方向へ向かっているのではないかと思う。

20年くらい前なら、特徴的な字体で表示した「シャルマン」「シャレード」の同型看板も残っていたように思うのだが、さすがに写真は撮ってないす。

現存するこのタイプの看板で、アプローズの名が残っているものはもうないと思う。
かろうじてアプローズの字が読めるこの看板は、残っていると言っていいものやらどうやら。

この看板は、今でも営業している整備工場にあるものだか、このような状態になってもいまだに撤去も更新もされず、今日も建物の国道側という表舞台でそびえたっている。

かつて週刊朝日で連載されていた「乗んなきゃわかんない」(著者下野康史氏)のアプローズの記事を紹介したことがあるが、氏は別誌の連載記事でもアプローズを取り上げている。
それがこの「カルト・カーがぜったい!!」、1993年から1994年まで、男性誌スコラで連載されていた記事を単行本化したものなのだが、不人気であったり、変わったコンセプトのクルマを取り上げて、独自の目線から解説をつけるという変わった評論本であり、サブカル的な雰囲気と、おふざけの入った文章がなかなか面白い。

アプローズの項の表題は「優れて実用的なクルマは売れない、の例」。
題の趣意は別として、下野氏の文章は全般に好意的で、くさすような事は書いていない。

一つ上で紹介した下野氏の「乗んなきゃわかんない」。
当時家で週刊朝日を定期購読しており、その中に乗っていた記事を切り抜いておいたもの。
この連載も後に単行本化されたのだが、アプローズの回は未収録。

最近下火になったようだが、インターネット掲示板「2ch」が盛んだった頃、自動車板に「アプローズについて語るスレ」(だったと思う)というスレッドがあった。
刺すか刺されるかという殺伐とした雰囲気の無い、マッタリとしたスレで、ロム専ながらよく覗いていたものである。

ここで印象的だったのは、このクルマにほれ込んだオーナーの書き込みがよくあったことで、(もちろん専用スレだから当然ではあるが・・・)、実用性であったり、スタイルであったり、アプローズを気に入った思いが伝わる書き込みを見るのは、同じくファンとしては楽しかった。
また別に印象的だったのは、リコール騒動を大きくした新聞社についての書き込みであるとか、セールスコピー「喝采」をもじって「火っ災」などと面白半分に書いているHPに対しての憤りについての書き込みもあった。

ずっと見続けていたわけではないのでいつ消滅したのかは知らないが、最後の方ではダイハツディーラーが修理を受けてくれないなどという寂しい書き込みがあったのを覚えている。

ダイハツアプローズは、私にとって所有したわけでも、運転したわけでもないクルマであり、世間一般に名車と評価されるクルマでもなかったのだが、その存在は今も忘れがたいクルマである。
(2016.9.18)

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