電子制御電磁オートクラッチ

スバルのオートクラッチ搭載車の歴史は古く、スバル360の時代、1964年(昭和39年) 4月から搭載車が発売されている。
今では馴染みのない存在となってしまった乗用車のオートクラッチ搭載車であるが、昭和30年代から40年代にかけては手軽なイージードライブ装置として、また体の不自由な方にも運転しやすい装置として比較的よく普及していた機構である。

スバルR-2の世代にも引き継がれたオートクラッチシステムであるが、レックス登場時に一時消滅、1980年(昭和55年) 3月に再び登場と相成った。
当時新型車として登場したスズキアルトが人気を呼んでおり、旧態化したレックスの商品力アップの狙いがあったのだろう。
この当時の軽自動車にはオートマチック車が販売されておらず、半自動という中途半端な方式ながら注目を集めるに値したメカであった。

もっとも他社とてその点に抜かりはなく、程なく同様のイージードライブ機構を用意した新型車が投入される。
最も一般的なトルクコンバータ方式のオートマチックは、スズキと、ミツビシが採用。
ダイハツはエンジンの負圧を使用する、バキューム方式のオートクラッチを採用した。

レックスは2代目モデルが終焉を迎える1986年(昭和61年)までこのオートクラッチシステムを採り続けるが、ダイハツ、ミツビシは昭和60年代に入るまでにトルクコンバーター式のフルオートマチックに換装、レックスのオートクラッチは孤軍奮闘する形となった
その後の3代目レックスでは他社と同じく一般的なトルクコンバーター式オートマチックが採用され、オートクラッチ搭載車は廃止。
オートクラッチ自体はその後もサンバーシリーズに細々と搭載され続けたが、程なくこの方式は姿を消した。

登場年次だけを並べてみると、いかにもレックスのオートクラッチは時代遅れなシステムという感じがするが、昔のオートマチック車はトルクコンバーターによるパワーロスが大きく、馬力の限られる軽自動車にとって、必ずしも相性の良いメカとはいえなかった実情が有る。
その点オートクラッチ車は、マニュアルクラッチ車(ふつーのミッション車)と同様の燃費と加速が得られ、エンジンブレーキも確実に利かせられるという利点があった。
また構造的に比較的簡単なので、コスト的にも有利であったのだろう。

しかし双方を比べれば、変速の手間が少ないオートマを歓迎するのは大多数のユーザーにとって当然の心理、特に購買層の中心であった女性ユーザーへの販売には、少なからず影響したのではないだろうか。

後に登場したECVT(電子制御電磁クラッチ式無段変速システム)の電磁クラッチシステムは、このオートクラッチで培った技術が母体となっている。

(追記)
初期のスズキアルトに採用されたオートマチックについて、フル・オートマチックであると記述していましたが、セミ・オートマチックが正解だったようです。訂正しました。

セミ・オートマ=急加速、急発進時には低速レンジに手動で切替える。

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