異端!? 異色のFFミニバン
日野コンマース

日野コンマース

コンマースは初代コンテッサにも積まれた900ccエンジンを搭載、前輪を駆動するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)ミニバン。
今では珍しくもなんとも無い前輪駆動車であるが、当時は世界的にも見ても少数派で未開拓の技術で有り、さらにワンボックスというスタイルとの組み合わせは大変珍しい物であった。

当時の日野の小型車は、セダンのコンテッサと日野ルノーにRR(リアエンジン・リアドライブ)、ボンネットトラック・バンのブリスカにはFR(フロントエンジン・リアドライブ)を採用しており、FF、FR、RRという3形態を有していた。
大メーカーならいざ知らず、決して生産規模の大きいとは云えない日野が、何故それぞれ違うパターンを採用したのか、趣味的にとても興味深い。

上段写真は60年代の市街地を征くコンマース。ブルーバード、ミゼット、クラウン、キャブライトと周りは他社のクルマばっかり。お愛想でもコンテッサや日野ルノーを出せばいいのにね。
FFで有るコンマース最大の利点、それは他車では望み得ない効率的で広大な室内スペース。
コンマースには10・11人乗りの乗用仕様と、貨物車仕様が存在したが、いずれも床の低く広々とした後部スペースを宣伝文句としてうたいあげている。

カタログには後部にベットを備え付けた「病院車」という仕様も掲載されている。病院車は患者搬送車や救急車という意味だろうか、ここでもFFならではの後部客室の広さが最大限にアピールされている。

なにかと良いことばかり記したコンマースの紹介記事だが、スペース効率以外の、走行性能や耐久性といった性能はいかほどの物だったのだろうか。
これについては、これ以上調べる術が無いので分からない。
ただ日野が小型車市場から撤退するより以前、比較的早い時期にコンマースが消滅しているのは事実。

貨物車ではいすゞエルフにもFF仕様という商品が有ったが、こちらもあまり芳しい評価が得られなかったことを無かったことを考えると、余り売れなかったのかもしれない。
余談ながらコンマースとよく似た顔つきのミニバンが共産圏に存在するらしい。よく見かけるのは旧ソビエト地区で、彼の地を写したテレビ番組等で何回も目撃している。
たまたま似ているだけなのかもしれないが、見かける度に気になって仕方がない。

もう一つ気になるのが後部客室ドアと、助手席ドアの関係。
助手席ドア、後部ドア共にBピラーにヒンジを付けているが、両方とも同時に全開はできないはず。
もし両方共に一気に開けたら「ごっちんこ」してドアがへこんじゃうんじゃないかなぁ・・。
何らかの対策がしてあったのか否か、これまた興味の有るところだが、実車を確認することができない今、確かめようがない。

さらにつまらない事を云えば、最下段イラストに登場する「コンマースに乗車しようとしている乗客群」が面白い。
スーツ姿の男女に、鳥打ち帽を被り大きなケースを持った男。温泉に一泊旅行にでも行くのであろうか、旅行鞄を持った男・・・。どういう団体やねん!?

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